人はその場にいない人の話をする
人はその場にいない人の話をする。恩田陸初戯曲「猫と針」の台本書籍版。
演劇とはいえ、派手な仕掛けはなく、淡々と会話だけで進む。
著者お得意の心理サスペンスの会話劇。
劇を行ったキャラメルボックスで先行して書籍が発売されたが、
内容の違いはなく、表紙があちらは役者の方という違いのみ。
普段台本をベースにした書籍をあまり読まないためか、話す人物の上に名前が書かれているという表記や、モノローグや説明文がないというのも違和感を覚えたが、
実際に劇場で見ていたことを思い浮かべて楽しく読めた。
…一方で劇を見ていない方にはどう映るのだろうと感じた。
DVDも発売されているが、7500円と中々高額で、演劇物はなかなかレンタルにならないからなあ。。。
読みながら、非常に「チョコレートコスモス」の中の劇中劇を思い浮かべる。続く「中庭の出来事」から連綿と連なる、演劇や戯曲への思いを感じられる一冊。
書き下ろしの、前日談から後日談を追った著者独白の「『猫と針』日記」も魅力的。
また、舞台が葬式帰りということで、「朝日のようにさわやかに」に収録されている短編「楽園をおわれて」を思い浮かべた。
こちらの話の方がよりミステリに近く、不穏な雰囲気を感じる。
すでに亡くなった人の話をする、そこに居ない話をするという点、さらに得意のオープンエンドという共通点も多いことから、未読の方はゼヒ御一読を!
「懺悔ってすっきりするもんだな。今、すごくすっきりした。秘密を墓場まで持っていける人間って、本当に偉大だわ。俺にはできない。推理小説でも、二時間ドラマでも、死に際とか、日本海の崖っぷちで告白しちまうわけがよく分かった。」本文76ページより猫と針