戦後日本経済史 (新潮選書)

戦後日本経済史 (新潮選書)野口 悠紀雄大蔵官僚からみた戦後経済
戦後から高度経済成長、バブル、バブル崩壊、そして現在に至るまでの日本の経済社会をおったもので、野口氏はその歴史の根底に戦中に作られた体制が脈々とひきつがれていると主張する。元々大蔵省官僚で、日本の経済を大きく動かしてきた面々と顔をつきあわせてきた野口氏の語り口には実感がこもっていて、説得力がある。また野口氏自身の個人史もところどころに挿入されることで、この手の本が陥りがちな、通り一遍な調子が払拭されているため、読みやすい。戦後経済史を別の面から見させてくれる一冊である。

「自分史」と重ね合わせた「1940年体制」の歴史

 当書は、著者の野口悠紀雄・早稲田大学教授が、大蔵官僚時代の体験等も重ね合わせつつ著述した戦後日本の経済の歴史であり、学術的な戦後経済史というよりも、著者の問題意識を背景としたエッセー風の読み物として目を通してもよいだろう。因みに、「戦後レジュームからの脱却」を“一枚看板”にしていた安倍晋三・前首相と、彼の尊敬する祖父・岸信介との「皮肉なめぐり合わせ」(本書)などに関しては、岸らの所為を描いた小林英夫『満州と自民党』(新潮新書)等が傍証になる。

 さて、上述の著者の問題意識(歴史認識)については、1995年に刊行された『1940年体制?さらば「戦時経済」』(東洋経済新報社)で詳説されており、その中で著者は「現在の日本経済を構成する主要な要素は、戦時期に作られた」(前掲書)と仮説する。それを「1940年体制」と名付け、この著作の主題である「日本の戦後経済は、戦時中に作られた経済体制の上に築かれた」(本書)とし、「ソ連や中国よりはるかに効率のよい社会主義経済ができあがった」(同)とする。

 具体的には、日本型労使慣行等に代表される企業統治、統制的な間接金融システム、中央官僚の思想的基盤、直接税中心の税体系、年金制度、都市・農村の土地制度などが「総力戦遂行のための1940年体制」(戦時総力戦体制)として確立され、これらが終戦(敗戦)を潜り抜け、あるいは看板を書き換え、断絶することなしに高度経済成長等で象徴される「戦後日本」の経済社会を構築し、世界でも稀に見る「平等社会」を実現した、と論断する。

 著者は「冷戦が終結したいま、日本はキューバと並んで、世界最後の社会主義国になっている」(同)とまで辛口を叩くのだが、この論判に対する読者の評価は微妙であろう。さらに、著者の「技術が経済制度を決める」という前提に立つとき、バブル崩壊で制度疲労気味の日本型「戦時経済体制」は、IT革命などによって変容する経済社会に適応障害を来しているかもしれない。しかし、小手先での弥縫策は難しいものの、「遺制」の全てを「市場」に捧げることも、これまた躊躇されよう。

戦後からバブル崩壊までを、、、この方は元大蔵官僚
辛口批評でおなじみの野口教授による、戦後からバブル崩壊までの日本経済史を振り返る好著。

野口教授は、もともと大蔵省ご勤務の官僚だったのですね。忘れてましたが。

だからというわけではないでしょうが、大蔵や日銀にかかる内情などが所々開示されていて、非常に興味深い。
戦後日本経済史 (新潮選書)

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